昭和天皇と神々の深き欲望
●先日、今村昌平の「神々の深き欲望」を観た。
●こんなあらすじです。(goo映画より)
今日もまた大樹の下で、いざりの里徳里が蛇皮線を弾きながら、クラゲ島の剣世記を語っていた。この島は、今から二十余年前、四昼夜にわたる暴風に襲われ津波にみまわれた。台風一過、島人たちは、根吉の作っている神田に真赤な巨岩が屹立しているのを発見した。神への畏敬と深い信仰を持つ島人たちは、この凶事の原因を詮議した。そして、兵隊から帰った根吉の乱行が、神の怒りに触れたということになった。根吉と彼の妹ウマの関係が怪しいとの噂が流布した。区長の竜立元は、根吉を鎖でつなぎ、穴を掘って巨岩の始末をするよう命じた。その日からウマは竜の囲い者になり、根吉の息子亀太郎は若者たちから疎外された。そんなおり、東京から製糖会社の技師刈谷が、水利工事の下調査に訪れた。文明に憧れる亀太郎は、叔母のウマから製糖工場長をつとめる亀に頼んでもらい、刈谷の助手になった。二人は島の隅々まで、水源の調査をしたが、随所で島人たちの妨害を受けて、水源発見への情熱を喪失していった。刈谷は、ある日亀太郎の妹で白痴娘のトリ子を抱いた。トリ子の魅力に懇かれた刈谷は、根吉の穴掘りを手伝い、クラゲ島に骨を埋めようと、決意するのだった。だが、会社からの帰京命令と竜の説得で島を去った。一方、根吉は、穴を掘り続け、巨岩を埋め終る日も間近にせまっていた。ところが、そこへ竜が現われ、仕事の中止を命じた。根吉は、二十余年もうち込んできた仕事を徒労にしたくなかった。根吉は頑として竜の立退き命令をきき入れなかった。豊年祈祷の祭りの夜、竜はウマを抱いたまま死んだ。そのあとで、根吉は、妹ウマを連れて島を脱出した。小舟の中で二人は抱きあったが、島から逃れることはできなかった。亀太郎を含めた青年たちに、根吉は殴り殺され、海中の鮫に喰いちぎられた。ウマは帆柱に縛られたまま、いずことも知れず消えていった。五年後、クラゲ島は観光客で賑っていた。亀太郎は一度東京へ行ったが、いつの間にか島に戻り、今は蒸気機関車の運転手をしている。そしてトリ子は岩に化身して刈谷を待ち焦がれているという。里徳里が今日もまたクラゲ島の創世記を観光客に蛇皮線で弾き語っていた。
●沖縄の孤島を舞台にした、呪術・近親相姦・開発をテーマにした今平の総決算的作品だ。代表作ではないが…
●この作品を観て今回思ったのが、村の長老・竜元の存在だ。これは実際には戦前・戦後を境に態度を翻した昭和天皇に対する批判ではないか?竜元自身も、開発担当の北村に対して「島の神聖な領域の不可侵」を主張していた。また、北村に御滝の開発を依頼されるとノロに聞かないと解らないと合議制をたてにあいまいな返事をする。これはまさに天皇制そのものだ。
●用水の確保が出来ず、空港開発に話が向かうと、竜元は「島も変わらなければならない」と態度を翻した。
●これは玉音放送後、退位もせずに天皇に在位し続けた昭和天皇批判に違いない。今村は弟子の原一男に「ゆきゆきて神軍」を撮らせている。
●なぜこんなことを長々と書いたかと言うと例の「昭和天皇メモ・靖国参拝」の件だ。あのメモの内容は要するに松岡洋祐、白鳥元田大使に不快感をもっていた。さらにそれをA級戦犯合祀した松平宮司に対する不快感がメモとして発見された。
●昭和天皇は松岡・白鳥個人に不快感をもっていたのか、それともA級戦犯合祀自体に不快感をもっていたのか?東条英機のお孫さんは天皇と東条の親愛の深さを主張する。
●A級戦犯の多くは東条を始めとして昭和天皇の身代わりになって刑に処された面を持つ。そのことに対して昭和天皇はどう考えていたのか?普通に考えれば感謝していたはずだ。それではこの件は単に独断専行が多い二人の外交政治家が生理的・もしくは道義的に嫌っていたのか?
●昭和天皇が靖国参拝をやめたのはA級戦犯合祀の年ではなく2年後だった。
●どちらにせよ新聞が書いてあるような靖国参拝に対する決定的事件というほどご大層な問題ではないだろう。
●靖国問題は昭和天皇の一存で決めていい問題ではないのだ。歴史的背景を問うと元々、天皇のために殉死した人を祀る神社である。しかし、戦後は国家神道を解体し、靖国神社は独立法人となっている。この段階で天皇の神社ではなくなっている。象徴天皇としての戦後皇室を選択し、現在も継続している現段階では個々の首相・政治家・皇族が判断すべきであろう。
●「神々の深き欲望」で竜元演じる加藤義が本当に昭和天皇としてよくだぶる。映画は島に空港が出来て、米軍将校や、富裕層が観光にくるところで終わる。戦後日本そののままの姿だ。だが、靖国問題はのどに刺さった魚の骨のように日本にゆさぶりを掛けてくる。この天皇発言で「分祀派」は幕引きしたいのだろうがA級戦犯どころか戦後の総括をやらずに憲法その他の問題を凍結してきたので、仮に分祀がうまく言ったとしても問題が収まったわけではない。
●なぜなら従軍慰安婦問題や南京虐殺問題など、戦後、忘れ去られた事件が突如、復活するからである。例えば、石井細菌部隊等、格好の標的ではないか。B級C級戦犯も蒸し返されないという保証もないし…
●ここで、せっかくだから「靖国問題」について私見を述べたい。
①まず、第一に国家として靖国神社をどう位置づけするのか。現在の独立行政法人のままでいいのか、それとも神社庁に入れて国家で管理するのか?分祀派は国家で管理するためにA級切り離しを進めたいのだろうが、それをすると明治維新以降の日本を否定することになりかねない。
②東京裁判が勝者の敗者に対する処罰であることは論を待たない。日本が総括する気があるのか。
③A級戦犯だけが近隣国に被害を加えたわけではない。外交問題として処分したらBC級でも処分しなければA級遺族に申し訳が立たない。
●こんなあらすじです。(goo映画より)
今日もまた大樹の下で、いざりの里徳里が蛇皮線を弾きながら、クラゲ島の剣世記を語っていた。この島は、今から二十余年前、四昼夜にわたる暴風に襲われ津波にみまわれた。台風一過、島人たちは、根吉の作っている神田に真赤な巨岩が屹立しているのを発見した。神への畏敬と深い信仰を持つ島人たちは、この凶事の原因を詮議した。そして、兵隊から帰った根吉の乱行が、神の怒りに触れたということになった。根吉と彼の妹ウマの関係が怪しいとの噂が流布した。区長の竜立元は、根吉を鎖でつなぎ、穴を掘って巨岩の始末をするよう命じた。その日からウマは竜の囲い者になり、根吉の息子亀太郎は若者たちから疎外された。そんなおり、東京から製糖会社の技師刈谷が、水利工事の下調査に訪れた。文明に憧れる亀太郎は、叔母のウマから製糖工場長をつとめる亀に頼んでもらい、刈谷の助手になった。二人は島の隅々まで、水源の調査をしたが、随所で島人たちの妨害を受けて、水源発見への情熱を喪失していった。刈谷は、ある日亀太郎の妹で白痴娘のトリ子を抱いた。トリ子の魅力に懇かれた刈谷は、根吉の穴掘りを手伝い、クラゲ島に骨を埋めようと、決意するのだった。だが、会社からの帰京命令と竜の説得で島を去った。一方、根吉は、穴を掘り続け、巨岩を埋め終る日も間近にせまっていた。ところが、そこへ竜が現われ、仕事の中止を命じた。根吉は、二十余年もうち込んできた仕事を徒労にしたくなかった。根吉は頑として竜の立退き命令をきき入れなかった。豊年祈祷の祭りの夜、竜はウマを抱いたまま死んだ。そのあとで、根吉は、妹ウマを連れて島を脱出した。小舟の中で二人は抱きあったが、島から逃れることはできなかった。亀太郎を含めた青年たちに、根吉は殴り殺され、海中の鮫に喰いちぎられた。ウマは帆柱に縛られたまま、いずことも知れず消えていった。五年後、クラゲ島は観光客で賑っていた。亀太郎は一度東京へ行ったが、いつの間にか島に戻り、今は蒸気機関車の運転手をしている。そしてトリ子は岩に化身して刈谷を待ち焦がれているという。里徳里が今日もまたクラゲ島の創世記を観光客に蛇皮線で弾き語っていた。
●沖縄の孤島を舞台にした、呪術・近親相姦・開発をテーマにした今平の総決算的作品だ。代表作ではないが…
●この作品を観て今回思ったのが、村の長老・竜元の存在だ。これは実際には戦前・戦後を境に態度を翻した昭和天皇に対する批判ではないか?竜元自身も、開発担当の北村に対して「島の神聖な領域の不可侵」を主張していた。また、北村に御滝の開発を依頼されるとノロに聞かないと解らないと合議制をたてにあいまいな返事をする。これはまさに天皇制そのものだ。
●用水の確保が出来ず、空港開発に話が向かうと、竜元は「島も変わらなければならない」と態度を翻した。
●これは玉音放送後、退位もせずに天皇に在位し続けた昭和天皇批判に違いない。今村は弟子の原一男に「ゆきゆきて神軍」を撮らせている。
●なぜこんなことを長々と書いたかと言うと例の「昭和天皇メモ・靖国参拝」の件だ。あのメモの内容は要するに松岡洋祐、白鳥元田大使に不快感をもっていた。さらにそれをA級戦犯合祀した松平宮司に対する不快感がメモとして発見された。
●昭和天皇は松岡・白鳥個人に不快感をもっていたのか、それともA級戦犯合祀自体に不快感をもっていたのか?東条英機のお孫さんは天皇と東条の親愛の深さを主張する。
●A級戦犯の多くは東条を始めとして昭和天皇の身代わりになって刑に処された面を持つ。そのことに対して昭和天皇はどう考えていたのか?普通に考えれば感謝していたはずだ。それではこの件は単に独断専行が多い二人の外交政治家が生理的・もしくは道義的に嫌っていたのか?
●昭和天皇が靖国参拝をやめたのはA級戦犯合祀の年ではなく2年後だった。
●どちらにせよ新聞が書いてあるような靖国参拝に対する決定的事件というほどご大層な問題ではないだろう。
●靖国問題は昭和天皇の一存で決めていい問題ではないのだ。歴史的背景を問うと元々、天皇のために殉死した人を祀る神社である。しかし、戦後は国家神道を解体し、靖国神社は独立法人となっている。この段階で天皇の神社ではなくなっている。象徴天皇としての戦後皇室を選択し、現在も継続している現段階では個々の首相・政治家・皇族が判断すべきであろう。
●「神々の深き欲望」で竜元演じる加藤義が本当に昭和天皇としてよくだぶる。映画は島に空港が出来て、米軍将校や、富裕層が観光にくるところで終わる。戦後日本そののままの姿だ。だが、靖国問題はのどに刺さった魚の骨のように日本にゆさぶりを掛けてくる。この天皇発言で「分祀派」は幕引きしたいのだろうがA級戦犯どころか戦後の総括をやらずに憲法その他の問題を凍結してきたので、仮に分祀がうまく言ったとしても問題が収まったわけではない。
●なぜなら従軍慰安婦問題や南京虐殺問題など、戦後、忘れ去られた事件が突如、復活するからである。例えば、石井細菌部隊等、格好の標的ではないか。B級C級戦犯も蒸し返されないという保証もないし…
●ここで、せっかくだから「靖国問題」について私見を述べたい。
①まず、第一に国家として靖国神社をどう位置づけするのか。現在の独立行政法人のままでいいのか、それとも神社庁に入れて国家で管理するのか?分祀派は国家で管理するためにA級切り離しを進めたいのだろうが、それをすると明治維新以降の日本を否定することになりかねない。
②東京裁判が勝者の敗者に対する処罰であることは論を待たない。日本が総括する気があるのか。
③A級戦犯だけが近隣国に被害を加えたわけではない。外交問題として処分したらBC級でも処分しなければA級遺族に申し訳が立たない。
0 Comments:
Post a Comment
<< Home