Wednesday, July 05, 2006

岡本太郎・「明日の神話」と岡本かの子

●先日、日本テレビで岡本太郎の「明日の神話」と言う番組の特番を観た。60年代に岡本がメキシコで作成した巨大壁画が発見され、日本で復元されたのだ。それを日テレの敷地内で公開すると言うのだ。現物は観たことがないが、この壁画の存在は随分前に明らかにされ、整然の岡本敏子の最後の仕事でもあった事はNHKの「知るを愉しむ」で紹介されていた。
●今回は敏子と太郎の恋愛物語仕立てになっていた。プロデューサーは電波少年の土屋敏夫。敏子役には菅野美穂。番組の中で2人の間であんな会話が交わされていたのか、どうかは定かではないが…
●作品自体はいつもの岡本節で、特に特筆するものはないのだが、集まったミュージシャンはすごい。遠藤賢治、山下大輔‥。
●太郎がいかに敏子に支えられていたのかを強調していたが、太郎に多大な影響を与えた人物がもう一人いる。実母の岡本かの子の事を思い出す。
●岡本かの子は昭和初期の小説家。代表作は「老妓抄」「寿司」「食魔」「河明かり」など。生に貪欲な人間の実相を描く作品を多く残している。「食魔」はかの北大路魯山人のことを書いたもの。
●生というものに異様な執念を抱くかの子と太陽の塔や縄文土器に関心を示し、「美は呪術だ」と発言する太郎の芸術観は根底のところで通じ合っている気がする。
●かの子の「寿司」と言う作品は子供の頃、母親につくってもらった寿司の味を捜し求める初老の男と店の娘の淡い関係を描いたもの。一見すると太郎の芸術とは違いそうだが、ある意味、人間の生の原動力の不思議さを描くこの作品は「芸術は爆発だ」に近いと思う。人間は理論では割り切れない不可解な感情や思い入れに振り回されて生きていることを岡本母子は知悉している。
●小説を書くために柱に太郎を縛り付けて執筆に没頭したかの子。その背中に何かしら神聖なものを感じ取った太郎。父・一平と愛人の書生との奇妙な共同生活を続けた岡本一家。これらの過程においてあくまで敏子と婚姻関係を築かなかった太郎。その辺にメスを入れて欲しかった。
●岡本太郎という存在を2時間番組で語りつくすのは難しいが、新しい発見もあり(バタイユの秘密結社。しかし、あれは「夜の会」や「コントル・アタック」とはどう違うのか?そのへんの整理が足りなかった)、それなりには面白い番組だった。

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