Tuesday, June 06, 2006

追悼・今村昌平

●連日、新聞やテレビで報じられている今村昌平氏。気になることが一つ。「うなぎ」「楢山伏考」で有名な…という決まり文句が気になる。なぜなら、この二作はイマヘイの代表作ではないからだ。何故この二作なのかはカンヌでグランプリを受賞したからだろうが、イマヘイの真の実力は他の映画で確認して欲しい。ワタクシが私的にベスト10を発表します。
①「復讐するは我にあり」
実在する連続殺人犯・西口彰をモデルにした小説を映画化。主人公を演じる緒方拳の鬼気迫る演技もさることながら、父親の三国連太郎と妻役の賠償美津子がすごい。また、脇役のミヤコ蝶々なども一世一代の名演をしている。
②「赤い殺意」
東北の人妻が不倫がきっかけで女の本能に目覚め、殺人に転落していく話。主演の春川ますみと不倫相手の露口茂が圧巻。今見ると価値観が古い気もするが、それだけ世の中が急速に変わってきたのでしょう。
③「にっぽん昆虫記」
左幸子主演。このころの左幸子はヤバイ。SEXがきっかけで変貌するおんなの話なのも同じ。しかしイマヘイ監督の女性に対する無制限の信頼性は何に由来しているのか?
④「神々の深き欲望」
沖縄にある孤島をめぐる血と愛の壮絶なドラマ。文化人類学的アプローチで造られた快作。主演・三国連太郎。この映画でデビューした沖山秀子はこれ一作で伝説となった。ストーリーは島の開発に訪れたサラリーマンが古い因習と呪術に支配された島の人々に巻き込まれてていくお話。ただ、ここでストーリーを羅列してもしょうがない。とにかく観てとしかいいようがない…
⑤「豚と軍艦」
終戦直後の横須賀のチンピラを描いた青春群像。米軍占領下の日本のリアルを描いた傑作。主演・長門博之。
⑥「エロ事師たち」
野坂昭如の傑作小説の映画化。ピンク映画製作が職業のすぶやん(小沢昭一)とその周辺に集まる奇怪な人々の性生活を描く。
⑦「人間蒸発」
実際に夫が蒸発した妻を追いかけるドキュメンタリー。妻のナビゲーターっを勤める露口茂に妻が恋愛感情を持ったり、また、その様を映像化したり、この頃のイマショーは神がかり的だ。
⑧「盗まれた欲情」
イマヘイデビュー作。ねちっこい人間描写に早くも大物の風格が漂う。
⑨「楢山節孝」
坂本スミ子、清川虹子の快演だが、木下恵介版より上と必ずしも言いがたい。緒方拳が東北の貧民には見えない。彼は漁民タイプだ。描写、演出はすごいが成功しているとは言いがたい。
⑩「うなぎ」
油が抜けたイマヘイ映画。ぬるぬるしているのはタイトルだけ。ただ、小品としての味がある。

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